弘法の筆謬り

外資系企業で働く戦略コンサルタントのブログです

外資コンサル流賃貸物件の探し方(第9回)契約

※この記事は前回からの続きです。ぜひ概要編らお読みください。

無事第一希望の物件の内見を済ませ、後は契約するだけとなってもまだ気を抜くのは早いです。
ここからは契約金に関する交渉事が発生します。

交渉できるのは、仲介手数料と家賃発生日の2つです。家賃や管理費等は物件オーナーの設定金額なので仲介事業者が決める権限を有していないところですので、よほど相場とはずれた金額ではない限り交渉は難しいと考える方が良いです。

仲介手数料の交渉

第5回で、仲介手数料の構造については解説した通りですが、基本的にオーナー側から仲介手数料をもらっていない仲介業者の仲介手数料を値引かせるのは至難の業です。

こちらがわが1件だけ物件を名指しで紹介してもらい、特段手間をかけさせていない場合は、私に対して何かしてくれましたっけ?という感じで詰めて(笑)値下げをさせることもあり得るかもしれませんが、仲介手数料は仲介業者の唯一の食い扶持ですので、よほどのことがない限り値引きは難しいものです。

また、本記事では仲介業者の方と信頼関係を構築し、沢山物件を紹介してもらうことを想定した戦略を書いておりますので、感謝の意味でもあまり仲介手数料は値切りにくいものです。

家賃発生日の交渉

どちらかと言うと、こちらの方が応じてくれやすいと思います。
家賃発生日を決める権限を持つのもやはり仲介事業者ではなく物件オーナーですが、仲介事業者があるていど交渉してくれることになります。交渉力を高めるポイントは下記2つです

契約の意思決定は迅速か

物件が市場に出回ってから契約までに時間がかかっていないので、家賃発生日を後ろに遅らせてくれ、というのはわかりやすい交渉力になります。

ところで物件退去日の1ヶ月又は2ヶ月前通告を借り主に義務付けている物件が多いので、仮に2ヶ月前通告の場合、新居の家賃がすぐ発生することになると、2ヶ月の間2つの物件に対して重複して家賃を払い続ける事になってしまいます。

これはあまりに借り手にとって不利であるばかりか賃貸物件の市場流動性を下げる要因にもなるため、物件の流動性を高めて仲介手数料を得ることを生業とする仲介事業者としても、ある程度借り手と利害が一致しています。

この申込み⇒内見⇒契約までのリードタイムが短ければ短いほど、借り手として交渉力が強くなります。

礼金を払っているか

礼金を1ヶ月分でも支払いを求める物件の場合は、家賃発生日を多少なりとも後ろに交渉することができます。

不動産業界に依然として残り続けるこの”礼金”という風習ですが、貸し手側からすると利益をいたずらにあげるというよりも、物件の稼働率を高める目的で残り続けるものだということがわかります。

不動産投資をしたことのある人ならよく分かると思いますが、不動産事業のKPIは1にも2にも稼働率(すなわち家賃の発生している期間)です。なんだかんだと理由をつけて契約までの意思決定を先延ばしにする借り手も存在しますが、その悩んでいる間も物件の稼働率は下がり続けます。

どうしても物件の借り手を募集してから実際に借り手に(空の部屋を)内見してもらい、契約をしてもらうまでには数週間程度の空白期間(家賃が発生しない期間)が発生してしまいます。

貸主として、借り主が変わるたびに毎回不可抗力として発生するこの空白期間を埋める意味で礼金を1ヶ月分設定する貸主も存在します。

ともあれ、礼金は貸主として一定の家賃不発生期間を許容し得る保険としての機能があるわけですから、礼金の分家賃発生日を遅らせてくれというのは一定の合理性をもつものと言えそうです。

 

ただ、全ては仲介業者の担当者の方次第です。

オーナーが面倒くさい人なのでできれば交渉したくない、この条件のまま契約してくれる方がありがたい、というようなケースであれば上の話をどれだけしたところで譲歩が引き出せないこともままあると思います。

こういう交渉をお願いするためにも、日頃から仲介業者の方とは丁寧に対応することを心がけたいものです。

本編まとめ

全9回に亘って書いてきましたが、本編はここで終わりになります。
私は現役のコンサルタントに過ぎず、不動産に関する専門家では有りませんので、もしかすると誤りのある部分があるかもしれませんが、コンサルタントが一大イベントである賃貸物件の選択について、何を考えてどう行動しているのかについて、”読み物”としてお楽しみ頂ければ幸いです。

「番外編① コンサルはどこに住むべきか」に続く